分散型電源(自然エネルギー)がつくる新しい生命体

微生物の中には,水と二酸化炭素だけで生きていける独立栄養微生物がいます。これと同じ発想で,地域の中で,「太陽光発電」とその太陽光発電の余剰電力から水素を製造する「水素製造装置」,そして水素から電力を発電する「燃料電池」を地域の中でネットワーク化し,マネジメントすることで,エネルギーをほぼ自給できるクラスター(群れ)を作ることができると考えられます。イメージを下図に示します。これは、外部からは,太陽光と水が与えられれば,持続可能な経済単位となります。

また、近年はあらゆるものにコンピュータが内蔵され、これらがネットワーク化されるというIoT(インターネット・オブ・シングス;もののインターネット)技術への流れが盛んですが、各分散電源にもIoTでインターネットに接続されて、相互に情報通信が可能となれば、「群知能」を構成することも可能だと思われます。

蟻の群れによる群知能は有名です。アリは、個々の個体は高度な知能を持たないが、役割分担がなされた社会システムを構築することができます。

このような群知能を模して、「分散電源のネットワークによる知的制御システム」のようなものはつくれるのではないかと思います。ひとつひとつは高度な知能をもたず、高度な知的処理、言語処理はできないが、これらが群れやネットワークを構成することにより、知的な組織体を構成し、社会の活動を支えていく、そして循環型社会へと移行していくこともできるのではないでしょうか。

分散電源が自己組織的に群れとなり、有機的に結合することにより、生命のような恒常性、頑強性、柔軟性を持った知的なシステムが生まれます。これは「人間の頭脳に近い」人工知能ではなく、もう一つ別の人工知能の進むべき方向ではないかと考えます。

 

この点については、下記の書籍でも詳しく記述しています。

石田武志人工知能ロボットがつくる「無人自動企業」の可能性: もう一つの人工知能 人工「低」能による群知能がつくる未来』電子書籍Kindle版、2016年3月