書籍の情報

石田武志著『システム工学で描く持続可能文明の設計図 ―文明設計工学という発想―』
大学教育出版 定価本体1,800円+税、A5判170頁
ISBN 978-4-86429-245-0 2014年6月20日刊行

書籍概要
人類の知を結集することで次にくる文明のパラダイムシフトを「設計」できるのではないか。環境問題や地球システム・生命システムを「エントロピー」や「エクセルギー」を切り口にみていき、将来の望ましい社会や文明の構造を導きだす、いわば「文明の構造を設計」を提案しています。衰退していく日本の憂鬱な未来予測ではなく、未来の社会システムを自ら設計する方法をさぐります。

目次
第1章 文明は生きている!? ;生物進化に対比してみる文明の興隆と衰退
1-1 文明は「進化」する
1-2 文明の「誕生」と「死」
1-3 文明の博物学 ;文明の「進化系統樹」
1-4 文明の相移転 ;人類史の2つのパラダイムシフト
1-5 次のパラダイムシフトの可能性

第2章 エネルギーの視点でみる文明
2-1 エネルギーでみる文明の水準
2-2 エクセルギーとエントロピーの視点でみる文明の構造
2-3 エネルギー資源問題とは無縁の自然界のシステム
2-4 農耕文明のエクセルギー・エントロピー過程
2-5 化石燃料文明のエクセルギー・エントロピー過程
2-6 再生可能エネルギーによる持続可能文明の可能性

第3章 物質の流れの視点からみる文明
3-1 文明と科学技術の関係
3-2 「物質エントロピー」でみる生産工程
3-3 産業革命の終着点;人間はどこまで複雑な技術をつくれるか
3-4 新たな産業革命の可能性 ;3Dプリンタによる産業革命
3-5 生物に学ぶ新しい機械

第4章 文明を「設計」できるか?
4-1 文明の将来予測 ;予測の可能性と限界
4-2 「予測」から「設計」へ ;文明の設計図を描くという発想
4-3 新しい地球の姿を設計図として描く方法
4-4 次の文明の設計目標と設計仕様
4-5 次の文明のパラダイムシフトを支える要素技術
4-6 22世紀文明の設計図

第5章 日本から生まれる「太陽と海の文明」
5-1 文明のパラダイムシフトが生まれる条件
5-2 文明の設計図の日本への適用1 ;太陽の文明
5-3 文明の設計図の日本への適用2 ;海の文明
5-4 地球の「腎臓」の必要性

第6章 パラダイムシフト後の文明世界の俯瞰
6-1 文明によって変わる生態系
6-2 文明によって変わる人類
6-3 文明を「内蔵・器官」に加えた新しい「地球生命体」への進化

本書の要約

①一つ一つの文明の誕生・発展・衰退の過程を生物に対比してとらえ、「文明の進化」という観点から文明を見直してみる。生物の世代交代が進化には不可欠であるように、様々な文明の誕生・崩壊も人類社会の進化にとっては必然的なものである。

②カンブリア紀の生物進化の爆発のように、進化は時として不連続である。文明も個々の文明の興隆・衰退の中で、農業革命、産業革命のように、大きなパラダイムシフトが起こってきた。さらに地球の歴史を俯瞰すると、生物も文明の進化も「加速」していることがわかる。次の大きなパラダイムシフトが近づいていることが予想される。

③文明を生物的視点で考える視点をさらにすすめ、生物のエネルギー過程、物質循環過程と同様に、文明もエネルギーと物質の流れで考えてみる。また、生物の自己組織化能力という視点を文明・社会にも適用してみる。

④文明をエネルギーと物質の流れで考えることができれば、工場のプラントや情報システムを考えるときの「システム設計」という手法を用いることができ、この方法で、次の文明を「設計」する方法を提案する。

⑤日本をケーススタディとして、次の文明である「太陽と海の文明」を設計してみる。数値的な詳細設計はまだ困難であるが、概念設計(ラフデザイン)を示すことができる。新しい文明は、太陽エネルギーや海洋エネルギーをベースに今より一桁大きいエネルギーを使える文明である。また自己組織化機械の実用化により、人間に代わって付加価値を自動的に創出できる文明である。